R35GT-Rミッション対策メニューとは

納車整備時の特別価格

565では、R35GT-Rの初期型(車台番号5400番台まで)を安心してお乗りいただくために、GR6ミッションのトラブルを未然に防ぐ対策(強化Cリング・クラッチオイルシール・シフトコントロール・油圧コントロールモジュール)を納車整備時限定の特別価格(税込)20万円にて承っております。作業はR35GT-Rのトランスミッションに関して造詣の深いメンテナンスパートナーのNEKOコーポレーションが担当しています。また、ミッション対策と同時に駆動系の異音対策として2015年モデルのフライホイールハウジングに交換+プラグ交換を行うメニューもご用意しております。お気軽にご相談ください。
 
1-DSC02437ミッショントラブル対策の作業手順

■ミッションおろし
ご存知のようにR35GT-Rのトランスミッションは、車両の後方に搭載されたトランスアクスル方式です。トランスミッションとリヤのデファレンシャルユニットが一体となったものです。さて、ミッションを降ろすには、まずリヤのディフューザー類を外す必要があります。これらを外さないとすべての作業ができません。ディフューザーは3つの部品から構成されていますが、これら3つの部品すべてを外します。続いて、マフラーも外します。フロントパイプ後方でマフラーを切り離してマフラーを降ろします。

いよいよトランスミッションが見えてきました。トランスミッションはリヤのサスペンションメンバーごと車両から降ろします。そのため、ブレーキキャリパー、ショックアブソーバーを切り離します。さらにトランスミッションに繋がっている配線カプラーや、水冷式オイルクーラーの水配管も切り離す必要があります。水配管の切り離しには、このような専用の治具を使って外すのですが、さながら人間の手術のようですね。さらにプロペラシャフトの接続も切り離し、いよいよトランスミッションを車両から降ろします。大変、重いユニットなのでこのような専用のリフトを使います。

トランスミッションはこのようにサスペンションメンバーごと車両から降ろします。車両側はこのようになります。今回、トランスミッション対策を行なった車両は走行距離も浅く、新車のような状態でした。さぁ、いよいよトランスミッションをサスペンションメンバーから外します。サイドブレーキワイヤーやドライブシャフトなどを切り離し、トランスミッション単体の切り離しに成功。ココで、トランスミッションに専用の治具を取り付けます。というのも、トランスミッションの分解作業はこのように立ててする必要があるのです。さながらアンコウの解体のようです。準備ができ、いよいよトランスミッション本体の分解作業に入ります。
 
 
■トランスミッションの分解

トランスミッション分解作業です、まずは黒いオイルパンを外します。あらかじめミッションオイルは抜いてありますが、オイルパンを外すと残ったオイルが大量に出てきます。そこで、専用治具と専用オイル受けが活躍するわけです。オイルパンを外すと油圧でシフト操作を行なうシフトコントロールユニットがあらわれます。シフトコントローユニットを外すと、トランスミッションギヤやシフトフォークなどの重要部品があらわれます。シフトコントロールユニットは後に軽く洗浄作業を行なうのでトレイに入れて保管します。

続いてミッション本体の分解です。ギヤユニットが入っているケースの上側の部分にGT-R独自のツインクラッチユニットと4輪駆動システムのE-TSユニットが入っていますので切り離します。この時、立てて作業すると効率が良いのです。日産自動車のトランスミッションオーバーホール作業もこのように立てて作業しているのです。トランスミッションギヤが入っている方(画像右から2番目)は、ドライブギヤのCリング破損対策を行ないます。一方、クラッチユニットやET-Sユニットが収められているケース側(画像一番右)は、クラッチの各種対策や油圧ポンプユニットの対策などを行ないます。

 
 
■ドライブギヤのCリング対策

R35GT-Rのミッショントラブルの中では、よく知られたトラブルでしょう。とくにチューニングした車両やサーキット走行、ゼロヨンなど、ハードな走行をしなくても遭遇するトラブルなのです。本当に、普通に使っているだけで、車庫入れなどの際などにも発生することがあるのでタチの悪いトラブルと言えましょう。症状としてはミッションから突然「ガラガラ」と音が出ます。音が出たらスグに走行を中止すれば軽傷で済みますが、車庫入れを続行したりディーラーまで走行したりすると致命的な損傷に発展するケースが多いトラブルです。原因は、アウトプットシャフトのドライブギヤを固定しているCリング溝が破損してしまうからです。このため、ドライブギヤがシャフト上で不安定になりガラガラ音が発生します。最悪の場合はドライブギヤがケース内で大暴れし、クラッチやE-TSユニット、センサー類などを破損させてしまうのです。こうなると修復は諦めざるを得ません。


このCリング溝の破損原因ですが、純正ギヤはギヤ音対策のため歯が斜めになったヘリカルギヤを採用しています。これがアクセルのオン・オフによってシャフト自体を軸方向に動かそうとする力を発生させるのです。初期モデルのCリング溝はシャフト先端から比較的浅いところに切られているため、この軸方向の動きで破損してしまうと推測されています。

事実、日産自動車も途中から部品を切り替え、後期型ではCリング溝からシャフト先端までの距離が長いものになっています。しかしながら市場に多く出回っているR35GT-Rは初期モデルです。当然、中古車の台数も多く、当店としましても必須対策の部位と考えています。

さて、その対策ですがCリングによる固定方法ではなく、特殊なボルトとナットによる固定方法を採用することで、このトラブルを防止しています。この車両のCリング溝は無事でした。まず、純正のCリングを外します。その後、特殊なネジを切った部品をCリング溝に掛けます。さらに特殊ナットで締めこむことで強固に固定されます。最後に万が一、ナットが緩むことが無いように緩み止めのCリングをかけて終了です。これで初期モデルでも安心したGT-Rライフが送れます。

 
 
1-DSC02530■クラッチトラブルの対策

R35GT-Rのトランスミッションはデュアルクラッチトランスミッションです。奇数段用と偶数段用のクラッチを2つ搭載しているのです。このミッションは、例えば2速で加速状態の時には、奇数段側のクラッチは切れた状態でギヤは3速にシフトして待機しています。シフトアップの瞬間は偶数段クラッチから奇数段クラッチに切り替えるだけ。その分、変速レスポンスが高いシステムとして、現在は海外のスポーツカーにも採用されているシステムです。奇数段用、偶数段用のクラッチにはそれぞれ6枚ずつのクラッチディスクを内蔵しています。クラッチ自体は湿式と言われるもので、常にトランスミッションオイルに浸された状態で、長寿命な点もこのシステムのメリットと言えましょう。

GT-Rのトラブルで、最初に発生したのがクラッチに起因するトラブルです。奇数段、もしくは偶数段側のクラッチにトラブルが発生しシフトできなくなる現象です。その原因はクラッチディスクを押し付ける役目のピストン部分のオイルシール破損です。写真のようにゴムの一部が欠けてしまうことで、本来ピストンを押すための油圧がかからなくなってしまうのです。

ではなぜ、オイルシールが破損してしまうのでしょうか。トラブルを起こしたクラッチをベンチテスト上で動かしてみると写真のように斜めに動いていることがわかりました。実際、トラブルを起こしたクラッチのオイルシールには写真のように斜めに当っていた痕跡が残っていました。

健全なクラッチで同様なテストを行なうと、斜めに動きませんでした。またストローク量を計測すると、トラブルを発生したクラッチの方が大きいこともわかりました。クラッチディスクのアタリがつき、ディスク面がわずかに摩耗したことでストロークが増えてしまったと推測されます。片側に6枚ものディスクがあるのですから、1枚づつの摩耗量は少なくても全体では6倍になってしまうわけです。その結果、ストローク量が増えてしまったことでピストンが斜めに動くようになってしまったのです。

そこで対策としてストローク量が増えてしまったクラッチには、薄いシムを追加することで、本来のストローク量に戻してあげます。こうすることでピストンは正常な動きとなり、オイルシールの咬み込みの防止にもなるのです。実際の作業は、精密なストローク量の測定を行ない、クラッチディスクの摩耗状態も1枚1枚確認します。

その結果、変速レスポンスも良くなり、とくに車庫入れなどの際にギクシャクとした動き(半クラッチ領域)も解消されます。実際、作業を施したオーナーからは、新車時よりもスムーズに変速するようになったと高い評価を頂いております。トラブル防止にもつながり、さらにスムーズになる。当店でもドライブギヤ対策と並んで必須のミッション対策メニューと言えるでしょう。

 
 
■油圧コントロールモジュールの対策

奇数段、偶数段のクラッチを駆動し、さらにシフトチェンジのための油圧を発生させるのが油圧コントロールモジュールです。このユニットも洗浄を行なうと同時に、いくつかの対策も実施します。まず、油圧コントロールモジュールを分解します。このユニットの中には油圧ポンプも組み込まれています。R35GT-Rのトランスミッションからはニィーという独特の音が出ていますが、それはこの油圧ポンプを駆動している音なのです。

分解しパッキンを外すと、事情に複雑な油圧回路があらわれます。じつはこのパッキンに初期型独特の問題があります。写真では指をさしている辺りになりますが、ここは本来パッキンが不要な部分になっているのです。しかし、初期型はゴムのコーティングが施されており、これが走行を繰り返しているうちに剥がれ落ちてしまし、写真の小さなオイルストレーナーを目詰まりさせてしまうのです。その結果、正規の油圧が確保できなくなり各操作に支障が発生します。

そこで、パッキンのゴムコーティングをカットします。じつは後期型のパッキンには既にゴムコーティング部分がありません。ちゃんと対策されているわけです。以上の作業と同時に、念のためオイルストレーナーも洗浄しておきます。続いて、油圧を少し高めにするためリリーフバルブのスプリングにシムを追加してセット荷重を変更します。油圧を高めにすることで、仮に将来エンジンチューニングを行なってもクラッチが滑りにくくなります。また、エンジンチューニングを行なわない場合でも変速レスポンスが向上するメニューです。いずれにしても、ミッションを分解したので同時にこれらのメニューも投入しているのです。それぞれの作業が終了したら、組立てて完了です。ここでも専用の治具が活躍しています。

 
 
■シフトコントロールの対策

R35GT-Rのトランスミッションは、クラッチペダルの無い自動変速です。通常のAT車のようにクルマに任せて走行することもできますし、マニュアルモードにすればF1マシンのようにパドルシフトを操作してシフトUP・DOWNを任意に行なうこともできます。GT-Rが登場する前にも、同じようなデュアルクラッチシステムを搭載したクルマが存在しましたが、シフトDOWNは違和感の無いレスポンスで動作するものの、シフトUPでは一呼吸おいてから作動するイメージでした。GT-Rの素晴らしさは、まったく違和感のない変速スピードを実現したことではないでしょうか。そのシフト操作を受け持つのが、このシフトコントロールモジュールです。油圧ソレノイドでシフト操作を行なうユニットです。

4つの円筒形の部品が油圧ソレノイドです。ひとつづつの円筒形の真ん中にある切欠きが、ギヤ側にあるシフトフォークに咬み込むことでシフト操作を行なっています。R35GT-Rは、ATで走っていると、街中でもあっと言う間に6速までシフトしてしまいます。走行条件によって、かなりこまめにシフトしています。むしろサーキット走行など全開で走っている時の方が各ギヤでレッドゾーンまで引っ張りますから、シフト操作の頻度は低いかもしれません。

ATモードで街中を普通に走っていると、頻繁なシフト操作によるためか、油圧ソレノイドとシフトフォークが咬み込む部分の摩耗が激しくなります。シフトソレノイドの素材はアルミのためと思われますが、この摩耗が激しくなるとシフトセンサー用の磁石が埋め込まれている部分がセンサー側の検知部分とズレてエラーとなり、シフト操作ができなくなります。現象としては、シフトチェンジができなくなる、あるいはシフトした際にそのギヤで固定されてしまうというものです。

対策としてはシフトフォークと咬み込む部分の摩耗対策を行なうのですが、日産自動車から油圧ソレノイドの咬み込み部分を保護するためのスチール製クリップがリリースされているので、その対策品使っています。後期型ではこのクリップが装着されていますが、前期型でミッション対策を施していない車両では当然装着されていません。クリップが装着されていない車両については純正のクリップを装着。さらに鉄粉などが油圧ソレノイドに付着していた場合は分解しない方法で鉄粉を除去しています。

 
 
■組み立てとベンチテスト

一通りの対策メニューを施したら、トランスミッションを元通りに復元します。接合部に液状ガスケットを塗布して組み立てます。

組み立てたトランスミッションは、ミッションオイルを入れて車載前に専用のテストベンチで動作チェックを行ないます。このテストベンチは当社のメンテナンスパートナーであるネココーポレーションが独自に開発したテストベンチです。このシステムが無いと、実際に車載して動作チェックを行なうしかありませんが、車載後に不具合が確認された場合は、再びトランスミッションを降ろして分解しなければなりません。テストベンチを使うことで、車載前に各部のチェックができるのです。このテストベンチは、車載状態と同様の条件とすることで、確実な動さチェックが行なえるシステムです。パソコンの制御画面には各クラッチに作用する油圧、油温。各ギヤのセンサー出力電圧などを確認します。もちろん、この時点でオイル漏れなどのチェックも行なっています。

 
 
■車載と合わせ込み

ベンチテストで問題が発生しなければ、いよいよ車載です。サスペンションメンバーにとトランスミッションを組み付け、専用リフトで車載します。さらにタイヤも取り付け、車載上でのトランスミッションの合わせ込み作業を行ないます。この合わせ込み作業は、通常、日産ディーラーなどではコンサルトⅢという専用の診断機を使用しますが、ネココーポレーションが開発した診断機は、ご覧のように超小型なタイプ。しかし、機能的にはコンサルトⅢと同等以上のものです。基本的にはコンサルトⅢでできる診断メニューはすべて可能です。トランスミッションプログラムも、度々修正変更を受けていますが、当店のメニューでは常に最新のプログラムをインストールしております。とくに初期の年式モデルではプログラム変更により、各段にスムーズかつ快適なドライブが可能になります。もちろん、弊社のトランスミッションメンテナンスメニューを実施することでさらにスムーズなシフトフィールになることは、多くのお客様にも好評をいただいております。